デジタル看板

デジタル時代、つまりインターネットが人々や機械をつなぎ合わせる時代には、従来からある多くの広告媒体が生き残れるかどうかの瀬戸際に立たされていますね。

テレビCMは大きな打撃を受けていて、大手メーカーなどは新製品の発売開始などに合わせて有名な俳優などを起用した凝った作りのCMをこれでもかという感じで放送し、同時に街にはポスターがあふれ、新聞や雑誌の広告も連動して、その広告を目にしない日はないようになっていました。いちおう、ターゲットは絞られていて、ゴールデンタイムや午後のワイドショーでは流されるCMも違っていましたが、テレビである以上、視聴者は老若男女問わずというのが実態だったでしょう。

テレビ、新聞、雑誌などの広告がネットに侵食される中、屋外に設置される看板は、しぶとく事態に適応していて、今なお人気の広告手法の1つとなっています。

特に通勤者が行き交う大都市では、数秒ごとに変化するデジタル映像を映し出す大型のモニターがさまざまな場所に設置されていて、商品やサービス、あるいは公共サービスや政府や自治体からのお知らせを表示しています。

通勤者が多ければ、市場や人口統計に基づいたターゲティング広告も可能です。顔認証だけでなく、骨格の動きや姿勢などから、LED大型看板の前を通る人が何歳くらいなのかAIは推定することができます。持っている荷物から観光客かどうかを見分けることは比較的容易だそうです。

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こうしたデジタルスマート看板は、バスの停留所、ショッピングセンター、駅のコンコース、高速道路の横や、ビルの壁面など、自動車や電車、人々が行きかう場所に巧みに配置されています。

実は、デジタル看板が単純に広告をローテーションしていた時期に、いちど、デジタル看板は不調に陥ったことがあったそうです。やみくもに切り替わるだけの宣伝は、すぐに視界の一部を遮るノイズになってしまって、誰もが単純に無視するようになったためです。

広告が人目を惹くには、言葉通りの意味で広告が視聴者に語り掛ける必要があるのだそうです。そのためには情報ネットワークに接続し、環境に動的に適応して広告を表示する必要があります。日付や時刻はもとより、天候などに応じて広告の出し分けをするあたりからスマート看板の高度化が始まったようです。

さらにセンサー、カメラ、赤外線などが搭載され、スマート看板には目や耳が備わりました。

ロンドンの地下鉄ではデジタル看板の上にセンサーを取り付けて、列車がホームに入ってきたときに生じる強い風を検知できるようにしました。そして、電車が入ってきたら、画面に大きく映し出された女性の長い髪の毛が強い風に吹かれて巻き上がるようにしたのです。こうすることで、単純な動画では無視される看板が、視聴者が肌で感じる空気の流れと視覚的にシンクロする映像を映すことで、即座に人々の強い興味を惹くことになったのです。

こうした試みは世界中で行われていて、とくに今年は新宿や渋谷、大阪の道頓堀などに設置された3D看板が人々の関心を集めました。

台湾でも中国でも韓国でもヨーロッパでも北米でも、3Dビルボードは盛況です。

また、前に立った人と短時間で勝負がつくゲームを行うデジタル看板もあるそうです。親子連れが近づいてきたら子供の興味を惹く映像に切り替えれば、親は立ち止まらずを得ません。

自販機

もちろん、顔認証やモバイルの位置情報データなどとの連動に当たっては、視聴者のプライバシーを守るための配慮が大前提となりますね。

<参考情報>