デジタルアセットマネジメント(DAM)

デジタル化されている文書や、デジカメの写真、ビデオ映像、アニメーション、音楽や朗読などの録音などは、デジタル資産(digital asset)と呼ばれます。これを管理するのがDAM(デジタルアセットマネジメント)です。

単にデジタル情報を電子的に何らかの媒体(ストレージサーバーなど)に保存しておいて、後から見つけやすいように適切なフォルダーに格納したり、タグをつけたりするだけでは不十分。

デジタル資産と呼ばれるように、こうしたデジタル情報には著作権などさまざまな権利が付属しています。これに伴って、画像や映像、音声といったデジタル情報には、いろいろな情報(通常は、メタデータとして持ちます)がついてくることになります。

写真であれば、撮影の日時、撮影者、被写体のほかにも撮影場所や機材の情報などが考えられますが、後述する検索のことを考えれば、例えば、写真のアーカイブを作っておいて、後に例えばWeb記事の写真として利活用することを想定しているなら、「春らしい」とか、「かわいい」とか、「混乱」とか、「記念日」などといった、写真から浮かぶイメージや雰囲気などの言葉が写真と紐づいているとよいはずです。

 

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これらの情報は、権利関係の整理で必要となることはもちろんですが、後の利用のことを考えればデータを格納する段階から、適切なメタデータが必要となりますし、正しく保存されれば、検索も容易になるはずです。

 

特に、デジタルマーケティングの場合、DAMとはデジタル資産管理プラットフォームのことを指します。組織が保有するデジタル資産の全体を、効率的に保存、整理、活用するためのソフトウェア・プログラムであり、オンプレミス環境で提供される場合もあれば、クラウドで提供される場合もあります。

 

クリエイティブの制作にあたって、どこに自社のどんなデジタル資産があるかはっきりしていれば、探索に無駄な時間を費やす必要はありませんし、地理的に離れた場所にいるメンバーが協力してチームとして働くことも容易になります。

 

DAMで管理すれば、利用状況のトラッキングも容易です。費用をかけて作成した素材が、どれくらい利用されたかが分かればROI(投資対効果)を把握することも可能になります。ストレージサーバーに格納しておくだけでは、誰がいつ、何のために活用したかさえトラッキングすることができません。

 

DAMのグローバルでの市場規模は、2019年に10億ドル、2024年には69億ドルに達するという予測もあり、着実な成長が見込まれています。

 

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DAMを使えば、写真や映像、デザインなどについて自社が権利を持っているかどうか、あるいは、法務担当やコンプライアンス担当が映像に問題がないかどうか確認済みかどうか、デザイン規定に準拠しているかどうか審査済みかどうかなどもメタデータとして保持できるため、快適な運用が可能になります。こうした付加情報のない素材を、ストレージサーバーから発見したとして、その権利関係や審査の有無を調べるためには非常に多くの手間と時間がかかります。

ブランドは、素材を探すことや、チェックすることに時間をかけるのではなく、もっとクリエイティブな仕事に時間を費やすべきでしょう。

 

以前から、オンプレミスでDAMを実現するソフトウェアは存在しましたが、クラウドを使うサービスが増えてきてからの成長が目覚ましいようです。マーテック(デジタルを使ったマーケティング・テクノロジー)の中では、DAMはメルマガと同様に古くから使われているのですが、消費者とのタッチポイントがテレビやPCの画面やポスターなど限られた数であった昔と違って、デバイスの種類は増加し、デジタルサイネージの活用も広がり、DAMのメリットを強く感じるブランドが増えているということのようです。

 

また、DAMであればアクセス管理も可能です。デジタル資産にすべての社員がアクセスする必要はありません。アクセス管理ができれば、テレワークの社員や外国に居住しているパートナーにもアクセス権限を付与したり、取り上げたりすることが可能になります。

 

バージョン管理もDAMの便利な機能です。画像をトリミングしたり、ビデオを編集したりして、色を調整し、サイズを変更するなどの作業を誰かが行って、その途中途中の成果物を、バージョンとして保管してあれば、次に同じ素材を加工しようとする人は、振り出しに戻る必要がありません。自分の望みに近いものを選んでそのまま使うこともできれば、それをベースにさらなる加工を施すこともでき、いずれの場合も作業時間は大幅に短縮可能です。

 

Webのコンテンツ管理を行うCMSの場合、草稿(draft)、公開(published)などのバージョンがありますが、DAMであれば同じ素材のオリジナル版、Web用、SNS用など、用途に応じたバージョンも存在します。

 

このように、単なるストレージに保存するだけでは、埋もれてしまったり、使うのに大変な手間のかかるデジタル資産を有効活用するために、各国のマーケティング担当者がDAMの採用を推し進めています。

 

<参考情報>