人事部門のDX

組織の人材管理にもデジタルトランスフォーメーションが起こっています。ここにもCOVID-19の影響が出ているようです。デジタル利用により影響を受けるのは、当然のことながら人事部門のスタッフだけではなく、従業員たちや管理者たちの働き方や意識にも影響が及んでいます。

 

人事部門は多くの場合、長期間に渡って余りスタイルを変えていません。新卒や中途採用の募集をして、書類選考して面接をします。目標管理を導入している組織では自己申告書などを一年あるいは半年ごとに作成して、上司が面談を行います。成績が優秀であれば賞与が増額され、昇格の機会が与えられます。日々の勤怠管理などに基づいて給与が支払われます。

 

日本企業の伝統的な勤怠管理方法は、出勤簿に出勤・退勤時間を書き込んでハンコを押すとか、タイムカードという機械にカードを差し込んで出退勤時刻をカードに自動で印字する(打刻する)といった方法で、次第にシステム化が進んでいます。非接触ICカードの社員証をかざしたり、生体などで認証したりするのが一般的。目標管理などもWebで記入する方法が使われています。

 

こうしたIT化は効率化につながります。出退勤時間が手書きの紙だった場合に、その月の総労働時間や残業時間を計算する手間を想像すると、たとえ一人分でも手作業ではうんざりする作業量になります。昨今ではOCRやRPA、AI(人工知能)や機械学習を取り入れて、高度化が進んでいます。

 

リモートワークが広範な企業で採用されるようになり、弊害も明らかになりましたが、広く使われたことで解決策も数多く提案されています。仕事を進める上でも、Webを利用したプロジェクト管理ツールの採用が急増しています。

電話やメール、ビジネスチャットなどを駆使してもプロジェクトは進みますが、参加人数が増えたり、複数のプロジェクトが複雑に関連しているような場合には、オンラインツールが非常に有効で、仕事の効率が上がるだけではなく、確認作業の連続などによるメンバーのモチベーションの低下にも歯止めがかかります。

 

このように、DXは組織の生産性を上げるだけではなく、従業員のエクスペリエンスの質を向上させるという側面を持っています。人事部門としても、ネットでつながっていれば、年に一度の面談が関の山という状態から簡単に脱することができ、社員からのフィードバックも容易に得られますし、分析の実行も簡易化されます。人事業務の定量化が可能になるので、人材管理担当部門の検討材料が豊かになります。

 

組織間の連携、いわゆる部門間コラボレーションもデジタルで促進され、暗黙知が組織というタコツボに埋もれることなく、組織の壁を越えて流通するようになります。

 

福利厚生も、クーポン付きの印刷物が配られるといった状態から、QRコードに進化しますし、利用したかどうかのトラッキングも可能になります。健康診断結果も、シートを従業員に配るだけの状況から、Web上での表示に進化すれば、血液検査などの結果の数値が、どのように経年変化をしているのか、自分の目でも常に確かめることができますし、精密検査を受けることをWebを介して促すことで、健康リスクを低減することも可能です。

 

このように、人材管理を進める上で、デジタルには多面的なメリットがあり、多くの組織のその価値に気づき始めているようです。従業員満足度が高くないと、優秀な人材をつなぎとめることができなくなって、組織の将来に暗い影を落とすことにつながります。逆に、従業員エクスペリエンスが良ければ、役立つ人材が長期間に渡って貢献してくれて、組織にも活力が生まれ、それがまた新しい人材を外から惹きつけるというグッドサイクルに繋がります。

 

resume

 

<参考資料>