製造業とデジタル
製造業は相当以前から機械化が進められていましたし、日本では半導体や自動車の工場でロボットアームなどが大活躍しているシーンがテレビなどでもお馴染みですから、今さらデジタルトランスフォーメーションと言っても、すでに相当、デジタル化が進んでいるというイメージがあるかも知れません。
しかし、ここ何年かのAI、IoTの発展や、クラウドの進展によって、一部の大企業の工場だけでなく、さまざまな製造業の現場でデジタルトランスフォーメーションが進められているようです。
目的はコストの削減、工程の最適化、製品の品質の向上、労働環境の改善、そして全体的な生産性向上による競争力の確保です。
クラウドは、工場の情報通信インフラの適応力を高めてくれました。SaaSやPaaSが提供してくれているコンピューティング能力や記憶容量などをオンプレミスで準備するとなると、相当な設備投資が必要になりますし、何よりもサーバーやルーター、セキュリティ関連機器の実装や設定に長けたエンジニアを自前で持つか、ベンダーに費用を支払う必要がありました。クラウドの多くは自社に高度な専門知識を必要としません。例えば、セキュリティに関する配慮は、自社ではなくてクラウド事業者に任せることができます。また、クラウドに情報があれば、意思決定の場が工場から離れた場所であっても迅速な決断が可能になります。
インダストリアルIoT(IIoTと略されます)も製造装置を巻き込んだDXにとって重要な要素です。適切なセンサーか装置そのものからのデータ、カメラの映像やLiDARの情報は、作業者の環境、動き、製造プロセスなどの分析に使われ、オペレーションの再編成など、工程の最適化に活用されます。例えば、エネルギーの消費量を抑えるには、どのプロセスをどう変えればいいか、IIoTのデータを分析したAIが示唆してくれるようになってきています。
AIと機械学習によって、製品の不具合の発生を事前に察知することも可能になってきています。メンテナンス作業も、装置の不具合が発生する前にスケジューリングが可能になります。資格情報以外にも音の変化や温度の変動なども活用されます。
工場の中は自立走行するカートが縦横に走って部品や部材、工具などを運搬するようになってきています。ロボットが運ぶようになれば、作業者の肉体的な疲労も軽減できますし、安全も確保できます。
ARやVRは、作業者の作業を視覚的に支援してくれるばかりではなく、トレーニングのプロセスにも威力を発揮してくれます。必要な専門知識や経験を得るために、工場内を実際にに動き回る必要はありません。
また、3Dプリンターは、プロトタイピングの期間を大幅に短縮してくれますし、実際に小ロットの部品などを内製するために使われることもあります。
<参考情報>
- Manufacturing Digital Transformation: Top Technologies in 2022
- Digital Transformation In the Manufacturing Industry
- Why Digital Transformation in Manufacturing is Essential for a Future Advantage