小規模家電販売店のデジタル・マーケティング

書籍も家電製品も、リアルの店舗が苦戦していて、Eコマースが好調という構図がずっと続いています。

オンラインで本やテレビを買おうとする人は、多くの場合、その国や地域で人気の高い大規模なオンラインショップを選んでいるはずです。

けれども中小規模の販売店には活路がまったくないのでしょうか。デジタル・マーケティングで大手の巨大なECサイトに挑むためには、それなりの準備と戦略が必要でしょう。

洗濯機

まず注目すべきはミレニアル世代、Z世代です。ネット通販の大手は20年以上の歴史をもっているところが多く、その主たるターゲット層は徐々に高齢化しています。大雑把なくくりになりますが、若い世代ほど技術的な専門知識を苦もなく受け入れ、年齢が上がるほどそうした知識がなくても使えるものを選ぶ傾向があります。

小規模店舗は大規模店舗と、あらゆる面で競争する体力がありませんから、ターゲットを絞り、先鋭化する必要があります。ハンデのある人、子供、若年層、高齢者、マニアなど、それぞれのセグメントには異なるニーズがあります。

もし、リアルな店舗が地域密着の商売をなさっているならば、ネットでの戦略にもその特徴を取り入れるべきではないでしょうか。スマホもビデオデッキも初期設定が難しいし、大きな白物家電なら、今使っているものをどう処分するかが問題だし、保証期間が切れた後でも故障したときに相談する相手が必要です。

大手が同じ製品を安く売っている場合、小さな店舗は小回りが利くことを生かして付加価値を提供する必要があります。外国製のガジェットを、ネットでの評判を過信して購入した人の中には、届いた製品が予想と違って落胆したり、すぐに故障して当惑した経験があるかも知れません。小規模な店舗であれば、取り扱う製品に精通して、自信をもってオススメすることが可能です。

サイトでは、メタデータを充実させて、検索機能で消費者の利便性を高めます。顧客が間違った製品の名前を検索した場合に、検索結果なしで返してはもったいないので、類義語やスペルの揺らぎなどを緩くして、何らかの結果を返します。

大規模サイトのレビューは玉石混交です。新製品なのに何百件ものレビューが載っていて、どれも高評価という場合には特に注意が必要です。最近はAIがレビューを自動生成していて、人間が書いた文章と見分けがつかないことまであるそうです。

小規模店舗のサイトであれば、購買者のレビューも重要ですが、店舗にいる目利きのプロの言葉にも十分な信ぴょう性を持たせることが可能なはずです。そうした場合にはブログが威力を発揮します。

メーカーのCM映像とは別に、製品のビデオ制作も店舗で実施することが簡単になっています。こうした映像には実際の利用者のコメントを含めることもできるでしょう。

市場動向をよく見て、ターゲットにしているセグメントにとってのベストセラーを抽出することで、製品ラインナップの幅を必要以上に広げることを避けます。カートの中に入れた商品を分析して、オプションや消耗品などをレコメンドするコンテンツを提示します。一定額を超えると送料が無料になる設定は、平均客単価の向上に有効な方法のようです。

若い世代を相手にするのであれば、SNSによって潜在顧客や既存顧客とつながっておいて、コンテストやプロモーションを通じて関係を強化することも可能です。大手には品ぞろえや価格では勝てないでしょうが、大手とは1対1に近い感覚を築くことは難しいので、リピート客をしっかり捕まえることができるかも知れません。

エアコン

例えば、パソコンにある程度詳しい人であっても、やれCPUだメモリだRAMだIEEEだといろいろな数字が並んでいてもどう比較していいかわからない場合があるはずです。でも、パソコンを買おうかどうか考えているということは、何らかの用途を想定しているはず。中学生の子供に与える最初の機種、毎日、カバンに入れて持ち運んで、カフェで長時間使う機種、映像の編集を頻繁に行う機種など、利用者や用途によって適切な機種はあるはずです。それらすべてを提示するのは難しいでしょうが、いくつかの用途に対してしっかりとしたリコメンドができていれば、消費者は安心して選ぶことができるはず。

これはコーヒーメーカーや炊飯器、エアコンであっても同じでしょう。顧客と製品に精通していれば、魅力的な小規模ECサイトの構築と運営が可能になるはずです。

<参考情報>

Finding out where consumers make their decisions

How to Create a Consumer Electronics Marketing Strategy

5 effective strategies to increase your sales